INTRODUCTION

 「ストロベリー・フィールズ」「青い青い空」と、青春群像劇を描くことで評価が高い太田隆文監督が最新劇場用映画第3作目として選んだ題材は、メディア業界では“タブー”とされる原発問題を扱ったもの。  
  本作「朝日のあたる家」は、自然が美しいある町に突然降りかかる原発事故による悲劇と、否応無く事故に巻き込まれていくひとつの家族の姿を描いていく。  
  映画というものは、資金がなければ製作は出来ない。その資金集めに困難が予想された本作品は、企画の立ち上げから約1年半、ロケ地ともなった静岡県湖西市の人々の熱い支援により完成した。  
  太田監督の描くものには、常に“連綿と繋がっていく思い”が詰まっている。それは前2作を観た観客が心を震わせ太田作品を“大事なもの”として胸に留め続けることからも明らかだ。
 今作も原発事故というシビアな題材を扱いつつ、ひとつの家族の姿を、ロケ地となった自然の美しい湖西市を舞台にして浮かび上がらせていく。  
  そこにあるのは原発事故という悲劇だけではなく、家族、親子、次世代へと繋がる“絆”。その絆が何よりも大切なものであることを映画は見事に伝えていく。  
  すでに2013年5月のジャパン・フィルム・フェスティバル・ロサンゼルス 2013でも高評価を受けた本作。それは“想い”の詰まった映画ゆえに、言葉の壁を越えて人々の心に届いたからに他ならない。  
  的確な演出、効果的な音楽、ドキュメンタリーであるかのような俳優たちの演技、それを支えるスタッフ、湖西市の支援、それら全てが一体となって製作された「朝日のあたる家」。   
  “現在の日本”を生きる我々が真に必要とするべき映画がここに誕生した。

(取材/永田よしのり)


(C)「朝日のあたる家」